10/06/07
ユースの朝食は矛盾めいていた。
3ユーロと高い上に、内容はとても素朴なものだったんだ。
昨日知り合ったビリーとシェーンブルン(宮殿)を見学した。
シェーンブルンはホステルから歩いて30分ぐらいの所にあり、歩きながらビリーと過去に読んだ小説のことについて話した。
シェイクスピアも読むという、一風変わった彼は、現在ロンドンの大学で法律を勉強しているらしかった。
宮殿の中では、音声ガイドを借りるのを忘れたということに途中で気がつき、
またスタート地点に戻るのもめんどくさいので、近くにいた日本人のガイドの近くで立ち聞きしていた。
宮殿の外にはプライベート・ガーデンがあり、レモンの木が綺麗だった。
正直レモンが木になるとは知らなかった。
じゃあ、レモンはどう育つのかと聞かれたら困るが、
なんとなく始めからレモネードのグラスに挟まって生まれてきてもおかしくないではないか。
庭は広かった。
丘の上にある、グロリエットという門の上に登り、そこからウィーンの街が見下ろした。
宮殿を見学した後、ビリーと話しながらMuseum Quarterまで歩いた。
彼は法律を勉強しているのに、映画業界に興味があり、
自分が作ったアニメーションの短編作品がプラハの映画祭で上映されたと誇らしげに言っていた。
映画はシナリオが命と主張する彼に
「ライ麦畑と魔の山を混ぜ、その上に怒りの葡萄をかけて、それをグレートギャッツビー風に仕上げた小説」が書きたいと言うと、
「僕も二つの小説を衝突させたらどうなるかよく試すよ」という応えが帰ってきた。
ものを書く人は面白いしゃべり方をすると思った。
Museum Quarterに着くと、僕は美術史博物館を訪れ、ビリーはどこか他の美術館にいった。
Arcimboldoの季節の絵があった。これは面白い。
美術館を出ると夕立があったらしく、地面が湿っていた。
Burggartenで少し早めの夜飯を食べ(公園で食べられる夜飯など、たかがしれているではないか)、魔の山を読んだ。
夕方7時半に再びビリーと待ち合わせ、シェーンブルンの中で行われたモーツアルトのコンサートを聴いた。
雰囲気があってとてもよかった。
イギリスに帰ったらカフカの小説を読もうと思う。